活きた金の使い方

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文七元結

五代目古今亭志ん生「文七元結」

年の暮れのこと。

本所達磨横丁に住む左官の長兵衛が大川の吾妻橋に差し掛かると、橋の欄干につかまって飛び込もうとする、年頃二十歳ぐらいの店者がいる。

「なんだなんだ!こんな寒いのに飛び込んじゃ風邪引いちまうぞ。」

「離してください。私は生きていられないんです!」

「やめろってんだ!こん畜生!」バチッ!

「何ぶつんです。怪我したらどうするの。」

「今から飛び込もうってのに何言ってやがる。どうしたんだい。」

「生きていられないから死ぬんです。どうか助けると思って殺して下さい。」

「両方はできねぇよ。どうしたってんだい。」

引き止めて訳を聞くと、男は日本橋の鼈甲問屋の若い者で文七。
主人の使いで、小梅の水戸様から掛け金の50両を集金したが、枕橋で怪しい奴にスリ取られてしまったという。だから主人への侘びのために死ぬのだという。

それを聞いて長兵衛、
「お前さんな、寿命があるのを縮めるのは神に済まねぇぜ。殺されるならしょうがねぇ。向こうで勝手に殺すんだから。自分から死ぬのはいけねぇぜ。

お前さんが飛び込もうっていったって、俺はここから飛び込ませねぇ。親も兄弟もあるんだろ。ひとつ相談してみねぇ。

何?親も兄弟もねぇ?う~ん。。。

でも俺はここを動くことはできねぇ。どうだい、お前、死ぬのをやめて生きてみねぇかい。」

「じゃあ私死ぬのやめます。」

「そうかい。やめるかい。そうだよ。生きてりゃ何とかなるもんだ。」
と、気を緩めると、文七がまた飛び込もうとする。
どうにも50両の金が無いと埒があかない様子。

実は長兵衛の懐には、50両の金がある。

この金は、自分の博打が過ぎて家財道具は無くなり、借金もかさんで夫婦喧嘩が絶えないのを、娘のお久が見兼ねて自ら吉原の佐野槌に駆け込んで拵えたものだ。

半年でこの金を返さないと、娘のお久は女郎に落とされ、客をとるようになってしまう。

長兵衛はというと、家には着物も売っちゃって尻切れ半纏一枚しかなく、おかみさんの女物の着物を着ていて、ちょっと奇妙ななりをしている。

おかみさんはというと、腰巻もないので、紋付の風呂敷を腰にまいて、半分お尻を出して外出もならず、家で帰りを待っている。

・・・

「じゃあ50両の金があればお前は助かるんだな!

う~ん・・・何とか助かる工夫はないかい、お前。

駄目か。50両か。50両あれば死なずに済むんだな!

じゃあお前に俺が50両・・・なんか他に考えはねぇかい。えっ?

何ねぇ?・・・じゃあ・・・う~ん、とんでもねぇとこに出くわしちゃったなぁ・・・

そいじゃ、おれはお前に50両の金やろうじゃねぇか!」

文七はそれを聞いて、知らない人からそんな大金は貰えないという。長兵衛は、娘がそういうことをしてできた金だと、この金のいわくを文七に言って聞かせる。

「おれもやりたかねぇや。でもな、お前はここで死ぬって言うんだからなぁ。俺んとこは別に死ぬってわけじゃねぇ。この金をお前にやって、かかあと離縁して家をたためばそれで済むんだ。

人の命はそうはいかねぇ。お前にやりたくはねぇんだ。やりたくはねぇけどやるんだ。だからこの金で助かったら、娘のために祈ってやってくれ。」

「いえ、いりません。そんないわくのある金は・・・」

「何言ってやがる、こん畜!やりたかねぇけどやるんだい!」
と言って、長兵衛は文七に50両の金をぶつけて逃げてしまう。

文七は店に帰ってその50両を主人に差し出すと、既に50両は店に届いていた。と言うのも、碁好きの文七が水戸様で夢中で碁を楽しんでいたので、置き忘れたものを水戸様の使いが届けてくれたのだ。

文七は自分の勘違いを悟り、吾妻橋の一件を主人に話をした。

翌朝、文七とご主人は酒屋で酒を買い求め、お礼のために長兵衛の家を尋ねる。

折りしも夫婦喧嘩の真っ最中。長兵衛は人が尋ねてきたので、半ケツの女房を枕屏風に隠して文七と主人を迎える。文七と主人はお礼を言って50両を返すと言うが、

「いらねぇよ!冗談言っちゃいけねぇ。江戸っ子が一旦やった銭をそうですかって返してもらうなんて、そんなことができるかよ。」

とやせ我慢を言うが、おかみさんが屏風の影から袖を引くのでしぶしぶ受け取る。
 
主人は、人が困っている時に自分を犠牲にまでして助ける長兵衛の心意気に感服し、自分と親戚付き合いをして、また、文七の親代わりになって欲しいとお願いする。長兵衛は断ることもないので承知する。

「つきましては、お礼の印にお酒を持って参りました。」

「酒かい?そいつは貰っとこう。

何肴?肴なんかいらねぇや。味噌舐めたって五合ぐらい引っ掛けちゃうんだから。」

「でもお肴がないと・・・もう肴が届いた頃じゃないかい?ちょいと文七見ておくれ。」

文七が表を開けると、路地に一丁の駕籠が着いている。
駕籠の垂れを開けて出てきたのは、文七の主人に身請けをされて晴れて自由の身になり、文金高島田できらびやかに着飾った娘のお久。

こんないい肴はないと、半ケツの女房も屏風から飛び出してきて、親子三人で抱き合って涙した。

これが縁で文七とお久は夫婦になり、麹町に小間物屋を出した。後年、文七が工夫を凝らした元結をあみ出し、後々文七元結、文七元結と持て囃され大層繁盛したという。

情けは人のためならず。人情噺「文七元結」の一席。



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  1. 2006/07/23(日) 01:29:13|
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  3. | トラックバック:1
  4. | コメント:2
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コメント

さすが江戸っ子!

私も情けがわかる人になりたいものです。
今の東京では、江戸っ子気質なんて
すごい少数派なんでしょうけどね。
いいものですね。
  1. 2006/07/23(日) 17:05:44 |
  2. URL |
  3. ナオ #-
  4. [ 編集]

コメントありがとうございます。

話の長兵衛みたいな人はそうはいないですよね。
だからこそジンとくるんだと思います。

  1. 2006/07/23(日) 17:38:37 |
  2. URL |
  3. おしり #-
  4. [ 編集]

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